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lundi 24 mars 2008

彼女アあの日ネ ― 苗代の稲妻 ― 生活

(Furigana optimized with IE)


彼女(アレ)アあの日(シ)ネ


木の芽(モエ)コ取(ト)ネ行(エ)た路(ケド)コ

其處(ソゴ)ネ山鳩(ヤマバド)コア啼いで居だキヤなア

蕗コ取(ト)ネ行(エ)タ澤コ

其處(ソゴ)ネ郭鳥(カコドリ)啼いで居だキヤなア


彼女(アレ)ア始(ハシ)めで返事(ヘンツ)コした川端(ヘギバダ)コネ

野茨(バラ)の匂(カマリ)コアして居だし

彼女(アレ)ア言ふごと聞えだ松林(マヅバヤシ)の中(ナガ)ネ

鶸(シワ)コア啼いて居だキヤなア


ああ こたらだごとア みんな消(ケ)ががてるいま

東京(トウキヨ)の真中(マンナガ)でこの人通(フトド)り激し晩方ネ

俺(ワ)ネつぐづぐどわがて來たのア

彼女(アレ)アあの日(シ)ネ あの林コがら歸(モド)る途中(トヂユウ)

たんぽぽの花コバふむつり

ふむつり投げだ気持コだでばせナ


***


彼女はあの日


木の芽を取りに行った道

あそこでは山鳩が啼いていたよな

蕗を取りに行った沢地

あそこでは郭公が啼いていたよな

彼女が初めて返事をした川端では

野薔薇の香りがしていたし

彼女が言うことを聞いた松林の中では

鶸が啼いていたよな

ああ こういったことすべてが 消えかかっている今

東京の真ん中のこの人通りが激しい夕方に

俺につくづくとわかってきたのは

彼女があの日 あの林から帰る途中

たんぽぽの花をちぎり

ちぎり投げ捨てていた気持ちなんだよな


☆☆☆


苗代(ナシロ)の稻妻(イナピカリ)


蛙(ゲロ)ア啼いで苗代(ナシロ)サ稻妻(イナピカリ)あ光(シカ)て來たンども

彼女(アレ)ア未(マン)だ出はて來(キ)ねネ

終々(シメシメ)ネ雨ア降て來て俺(ワ)ジヨウジヨウどなてまたンども

此處(コツ)から何時迄(イヅマンデ)も動(エゴ)ぎたぐねデア


段々(ダンダ)と雨ア強(ツオ)ぐなて來たハデ

蛙(ゲロ)も啼がなぐなてまたし

夜ア更けで來たどメデ

彼女(アレ)の家(エ)の灯(アガシ)コも消(ケ)でまたデア


***


苗代の稲妻


蛙が啼いて苗代に稲妻が光ってきたけれど

彼女はまだ出てこないんだ

ついには雨が降ってきて俺はびしょびしょになってしまったのだが

ここからいつまでも動きたくないんだ


だんだん雨が強くなってきたので

蛙も啼かなくなってしまったし

夜も更けてきたようで

彼女の家の明かりも消えてしまったんだ


☆☆☆


生活(クラシ) ―結婚(シュウゲン)の晩(バゲ)―


あれア風(カジエ)ア吹いで

ドロの樹(ギ)アジヤワめでるんだネ

泣グな

泣グな

花嫁ア泣グ奴(ヤヅ)アあるガ

銭(ジエン)コねはで泣グのガ

なんだて こした貧ボくせい結婚(シュウゲン)せねばまいねのガ


(みんな飯事(オフルメコ)だど思れ)


痩へだ体コくつけでも

なんも温(ヌ)ぐぐねジヤ

ああ 俺達(オラダヅ)二人ア

日(シ)あだりぬすむ蠅コど同(オンナ)しだ

明日がらお前(メ)も紫(ムラサギ)の袴(ハガマ)コはいで黒いまんとコかぶて役所サ行(エ)グのガ

貧ボ臭(クセ)い婿(ムゴ)ど花嫁だ

泣グな

泣グな

なんも恐(オカナ)グね

あれア風(カジエ)ア吹いで

ドロの樹アジヤワめでるんだネ


***


生活 ―結婚式の日の夜―

あれは風が吹いて

ドロの木がざわめいているんだ

泣くな

泣くな

花嫁なのに泣くやつがあるか

お金がないからといって泣いているのか

どうして こんなに貧乏臭い結婚式を挙げなければならないのか


(みんなこれが祝言だと思ってください)


やせたからだをくっつけてあわせても

全然暖かくならないよ

ああ 俺たちふたりは

陽光をかすめとる蠅と同じようなものだ

明日からお前も紫の袴をはいて黒いマントを着て役所に行くのか

貧乏臭い婿と花嫁だ

泣くな

泣くな

何も怖いことはない

あれは風が吹いて

ドロの木がざわめいているんだ


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